ハンガリー・オルバン政権:非自由主義的民主主義の深化とEUとの軋轢
概要
2010年以降、ハンガリーではヴィクトル・オルバン首相率いるフィデス=ハンガリー市民同盟が長期政権を維持し、「非自由主義的民主主義」を掲げ、保守主義と国家主義を基軸とした強権的な政策を推進してきました。オルバン政権の政策は、憲法改正や司法制度への介入、メディアへの統制強化、NGO・市民社会への締め付け、移民・難民の排斥、経済政策における国家介入の強化、そして選挙制度と医療制度の改変といった広範な領域に及びます。
本レポートでは、オルバン政権の政策における主要な問題点と、EUからの資金援助の利用状況、そしてEUとの対立の現状について、詳細に分析します。
1. オルバン政権の主要政策と問題点
(1) 憲法改正と司法制度への介入
- 2011年の憲法改正により、国家の理念にキリスト教的価値観を明記し、保守化を推進。
- 司法制度への介入を強め、最高裁判所判事の定年短縮や憲法裁判所の権限縮小などを行い、司法の独立性を著しく損なっている。
(2) メディアへの統制強化
- 政権に批判的なメディアへの圧力を強め、公共放送を事実上の政府広報機関化。
- 政府に近い財閥による独立系メディアの買収が進み、言論空間が縮小。
(3) NGO・市民社会への締め付け
- 政府に批判的なNGOを「外国の代理人」とレッテル貼りし、活動を制限。
- ジョージ・ソロス氏関連団体への圧力強化、中欧大学のブダペストからの追放など、市民社会の活力を奪う政策を展開。
(4) 移民・難民の排斥
- 移民・難民に強硬な姿勢をとり、国境フェンス建設、不法入国者の厳格な取締りを実施。
- 「移民はテロや犯罪の温床」という主張で国民の排他的な感情を煽り、EUの難民政策に反する行動を継続。
(5) 経済政策における国家介入の強化
- 戦略産業の国有化、親ロシア路線の強化、エネルギー分野でのロシア依存を強める政策を推進。
- EUの対ロシア制裁に消極的で、EU内での孤立を深めている。